自宅で手軽に本格的なコーヒーを楽しみたい、そんな想いを叶えてくれるのがイタリア生まれのコーヒー器具「ビアレッティ」。クラシックな見た目もおしゃれで、キッチンにあるだけで気分が上がりますよね。でも、「ビアレッティを買ったはいいけど、最初の使い方がわからない」「美味しく淹れるにはどうすれば?」と、戸惑っている方もいるのではないでしょうか。ご安心ください、ビアレッティの使い方はとってもシンプルです。
この記事では、ビアレッティを初めて使うあなたが知りたい、新品の状態からの準備(ならし作業)から、毎日の基本的な使い方、そしてワンランク上の味わいを引き出すコツまで、写真や図解を交えながら、やさしく丁寧に解説していきます。この記事を読めば、あなたもきっとビアレッティをマスターし、豊かなコーヒーライフをスタートできるはずです。
ビアレッティを初めて使う前に知っておきたいこと
美味しいコーヒーを淹れる前に、まずはビアレッティがどのような器具なのか、基本を押さえておきましょう。各パーツの役割や必要な道具を事前に知っておくことで、後の工程がスムーズに進みます。
ビアレッティ(マキネッタ)とは?その魅力
ビアレッティは、直火式エスプレッソメーカーの一種で、「マキネッタ」という愛称で親しまれています。 イタリアでは一家に一台あると言われるほど、生活に根付いたコーヒー器具です。 電気を使わず、ガスコンロなどの直火にかけて使うのが特徴で、水の蒸気圧を利用してコーヒーを抽出します。
ビアレッティで抽出されるコーヒーは、厳密にはエスプレッソとは異なります。 業務用エスプレッソマシンが約9気圧という高い圧力をかけるのに対し、マキネッタは約1〜2気圧で抽出するため、味わいはマイルドに仕上がります。 それでも、ドリップコーヒーよりは濃厚でコク深い、エスプレッソ風のコーヒーを手軽に楽しめるのが最大の魅力です。 また、キャンプなどのアウトドアシーンでも活躍する手軽さも人気の理由です。
各パーツの名称と役割
ビアレッティは、主に3つのパーツで構成されています。それぞれの名前と役割を覚えておきましょう。
・ボイラー(下部タンク): 水を入れる部分です。側面には安全弁がついており、内部の圧力が異常に高くなった際に蒸気を逃がす役割があります。
・バスケット(フィルターバスケット): コーヒー粉を入れるフィルター部分です。ボイラーの上にセットします。
・サーバー(上部ポット): 抽出されたコーヒーが溜まる部分です。中央には「チムニー」と呼ばれる抽出口があります。
この他に、サーバーの底には、コーヒーの粉が混ざるのを防ぐ「フィルタープレート」と、気密性を保つための「ゴムパッキン」がついています。
必要な道具を揃えよう
ビアレッティでコーヒーを淹れるために、以下のものを準備しましょう。
・ビアレッティ本体: サイズは1カップ用から18カップ用まで様々です。 1人で楽しむなら2〜3カップ用がおすすめです。
・コーヒー豆(粉): 「細挽き」または「中細挽き」が適しています。
・水: 軟水がおすすめです。
・熱源: ガスコンロが一般的ですが、IH対応モデルもあります。 小さいサイズのビアレッティを使う場合は、コンロの五徳に乗せるためのサポートリングがあると安定します。
【重要】ビアレッティの最初の使い方!新品の「ならし」作業
購入したばかりのビアレッティを、箱から出してすぐに使うのは待ってください。美味しくて安全なコーヒーを淹れるために、最初に行うべき大切な「ならし作業(シーズニング)」があります。このひと手間が、ビアレッティを長く愛用するための第一歩です。
なぜ「ならし(シーズニング)」が必要なの?
新品のビアレッティ、特にアルミ製のものは、製造過程で付着した金属粉や油分が残っていることがあります。 そのままコーヒーを淹れてしまうと、金属臭がコーヒーに移ってしまい、せっかくの風味が台無しになってしまうのです。
そこで必要になるのが「ならし(シーズニング)」です。この作業には2つの目的があります。
1. 内部の洗浄: まずは水洗いと、お湯だけでの抽出を行い、金属粉や汚れを取り除きます。
2. コーヒーの油分でコーティング: 実際にコーヒー豆を使って数回「捨て淹て」をすることで、コーヒーの油分が内部に付着し、金属の表面をコーティングします。 この油膜が金属臭を防ぎ、ビアレッティ本体をコーヒーの風味に馴染ませる役割を果たします。
この作業を行うことで、ビアレッティはあなただけのコーヒー器具へと育っていきます。
新品のビアレッティの洗浄方法
ならし作業を始める前に、まずは各パーツを丁寧に洗いましょう。
1. ビアレッティをボイラー、バスケット、サーバーの3つに分解します。
2. 食器用の中性洗剤と柔らかいスポンジを使い、すべてのパーツを優しく洗います。 この時、金属たわしやクレンザーは表面を傷つけてしまうため使用しないでください。
3. 洗剤が残らないように、水で十分にすすぎます。
4. 清潔な布巾で水分を拭き取り、完全に乾かします。
なお、この最初の洗浄時のみ洗剤を使用します。普段のお手入れでは、基本的に水洗いのみとなります。
実際にコーヒー豆を使った「ならし」の手順(捨て淹て)
洗浄が終わったら、いよいよコーヒー豆を使ったならし作業「捨て淹て」です。この工程で淹れたコーヒーは飲まずに捨ててください。もったいないと感じるかもしれませんが、この作業が今後のコーヒーの味を左右する重要なステップです。
1. お湯だけで抽出(1〜2回) まずはコーヒー粉を入れずに、水だけで抽出作業を行います。ボイラーに安全弁の下まで水を入れ、通常通りに組み立てて弱火にかけます。 抽出されたお湯は捨てます。これを1〜2回繰り返します。
2. コーヒー粉を使って抽出(2〜3回) 次に、実際にコーヒー粉を使って抽出します。この時使うコーヒー豆は、高価なものである必要はありません。安価なもので十分です。
・ボイラーに水を入れます。
・バスケットにコーヒー粉を入れます。
・ 本体を組み立てて弱火にかけ、コーヒーを抽出します。
3. 抽出したコーヒーは捨てる 抽出されたコーヒーは、金属臭や汚れを含んでいるため、必ず捨ててください。 この作業を2〜3回繰り返します。
回数を重ねるごとに、ビアレッティ内部にコーヒーの油分が付着し、金属臭が和らいでいきます。これで、美味しいコーヒーを淹れるための準備は完了です。
ビアレッティの基本的な使い方!美味しいコーヒーを淹れる手順
ならし作業が終われば、いよいよ美味しいコーヒーを淹れる時間です。ビアレッティの使い方は非常にシンプルで、一度覚えてしまえば誰でも簡単にお店の味を再現できます。 ここでは、基本的な使い方を5つのステップに分けて解説します。
ステップ1:ボイラーに水を入れる
まず、本体を分解し、ボイラー(下部のタンク)に水を入れます。水の量は、ボイラーの内側にある安全弁の下までが目安です。 安全弁は、内部の圧力が上がりすぎたときに蒸気を逃がすための重要なパーツなので、水で塞いでしまわないように注意してください。
水は常温の水でも構いませんが、あらかじめ沸かしたお湯を使うと抽出時間を短縮でき、コーヒーの風味が良くなるとも言われています。 ただし、お湯を使う際はボイラーが熱くなるため、火傷に十分注意して組み立ててください。
ステップ2:バスケットにコーヒー粉をセットする
次に、バスケットにコーヒー粉を入れます。粉はバスケットの縁まですり切り一杯入れるのが基本です。 このとき、エスプレッソマシンのように粉を強く押し固める「タンピング」はしないでください。 粉を詰めすぎるとお湯の通りが悪くなり、抽出不良や故障の原因になることがあります。
スプーンの背などを使って表面を優しくならし、均一にするのがポイントです。 バスケットの縁に付着したコーヒー粉は、サーバーとしっかり密閉するために、きれいに拭き取っておきましょう。
ステップ3:本体をしっかりと締める
コーヒー粉を入れたバスケットをボイラーにセットし、その上にサーバー(上部のポット)を乗せて、時計回りに回してしっかりと締めます。 このとき、サーバーとボイラーの間に隙間があると、そこから蒸気が漏れて圧力がかからず、うまく抽出できません。 火傷をしないよう、ハンドル部分ではなく本体を持って、力を入れて固く締めましょう。
ステップ4:火にかけて抽出する
本体をガスコンロなどの中央に安定させて置きます。火加減は、ビアレッティの底面からはみ出さない程度の弱火〜中火が基本です。 火が強すぎると、コーヒーが煮詰まって焦げたような味になったり、ハンドルが熱で溶けてしまったりする原因になるので注意が必要です。じっくりと時間をかけて圧力を上げていくことが、美味しく淹れるコツです。
ステップ5:抽出完了のサインと火から下ろすタイミング
火にかけてしばらくすると、ボイラー内の水が沸騰し、蒸気圧によってお湯がバスケットを通過し、コーヒーがサーバーの抽出口(チムニー)から「コポコポ」「シュー」という音を立てて出始めます。
抽出の終わりは音で判断します。抽出が進むにつれて音が変わり、「ボコボコッ」という大きな泡が出るような音になったら、それが抽出完了の合図です。 この音が聞こえたら、すぐに火から下ろしてください。火にかけ続けると、雑味や焦げ臭さの原因となります。本体は非常に熱くなっているので、火傷に注意しながらカップに注ぎましょう。
もっと美味しく!ビアレッティの使い方応用編とコツ
基本的な使い方をマスターしたら、次はもっと美味しいコーヒーを淹れるためのコツや応用テクニックに挑戦してみましょう。コーヒー豆の選び方や火加減ひとつで、味わいは大きく変わります。
おすすめのコーヒー豆と挽き具合
ビアレッティで淹れるコーヒーの味を大きく左右するのが、コーヒー豆の種類と挽き方です。
一般的にビアレッティに最適な豆の挽き具合は「細挽き」から「中細挽き」とされています。 粒度の目安としては、グラニュー糖くらいか、それより少し細かい程度です。 エスプレッソ用の「極細挽き」まで細かくしてしまうと、フィルターが目詰まりを起こしてうまく抽出できなかったり、雑味が出やすくなったりする原因になるため避けましょう。
豆の種類は、深煎りのものがおすすめです。ビアレッティは濃厚な味わいが出やすいため、しっかりとした苦味とコクのある深煎り豆との相性が抜群です。カフェラテなどミルクと合わせて楽しむ場合にも、コーヒーの風味が負けません。ビアレッティ社からもマキネッタ専用にブレンドされたコーヒー粉が販売されており、迷ったときはそちらを試してみるのも良いでしょう。
火加減を制する者が抽出を制す
ビアレッティで美味しいコーヒーを淹れるための最も重要な要素の一つが「火加減」です。基本は「本体の底からはみ出さない程度の弱火」ですが、この火加減をコントロールすることで、味の調整が可能になります。
火力が強すぎると、抽出時間が短くなりすぎてしまい、コーヒーの成分が十分に引き出されず、薄い味になってしまいます。また、コーヒーが過度に熱せられることで、焦げたような不快な苦みや酸味が出てしまうこともあります。
一方で、火力が弱すぎても抽出に時間がかかりすぎ、雑味が出やすくなることがあります。最適なのは、じっくりと時間をかけて、しかし長すぎない時間で抽出することです。目安として、火にかけてから抽出が完了するまで4〜5分程度が良いとされています。 何度か試してみて、ご家庭のコンロとビアレッティのサイズに合ったベストな火加減を見つけるのも、楽しみの一つです。
抽出がうまくいかない時の原因と対策
時には「コーヒーがうまく抽出されない」「味が薄い」といったトラブルが起こることもあります。そんな時は、慌てずに原因を探ってみましょう。
・蒸気が漏れる: サーバーとボイラーの締め方が緩い可能性があります。しっかりと締め直してみてください。また、長年使用している場合は、ゴムパッキンが劣化している可能性も考えられます。パッキンは消耗品なので、定期的に確認し、硬くなっていたりひび割れていたりしたら交換しましょう。
・抽出が遅すぎる・抽出されない: コーヒー粉が細かすぎるか、詰めすぎている可能性があります。 極細挽きの粉は避け、粉をバスケットに詰める際に強く押し固めないようにしましょう。
・味が薄い: コーヒー粉の量が少ないか、挽き方が粗すぎる可能性があります。 バスケットにすり切り一杯まで粉を入れ、挽き具合を少し細かく調整してみてください。また、火力が強すぎて抽出時間が短すぎる場合も味が薄くなる原因になります。
ビアレッティを長く使うための普段のお手入れ方法
ビアレッティは、適切なお手入れをすれば何年も使い続けることができる、非常に丈夫なコーヒー器具です。使い終わった後の少しの気遣いが、ビアレッティを育て、より美味しいコーヒーを淹れることにつながります。
使用後すぐに行う基本の洗浄
コーヒーを淹れ終わったら、ビアレッティ本体が自然に冷めるのを待ってからお手入れを始めましょう。 熱いまま水をかけると、金属が変形したり、火傷をしたりする危険があります。
冷めたことを確認したら、各パーツを分解します。ボイラーに残ったコーヒーかすはスプーンなどでかき出して捨てます。その後、全てのパーツを水またはお湯で洗い流します。 サーバー内部の抽出口の周りなど、細かい部分は指や柔らかい歯ブラシなどを使うと洗いやすいです。
洗浄後は、乾いた布で水分をしっかりと拭き取ることが重要です。水分が残ったままだと、特にアルミ製のものは白い斑点(水垢や酸化によるもの)が発生する原因になります。 拭き終わったら、すぐに組み立てずに、各パーツが完全に乾くまで風通しの良い場所で保管するのが理想的です。
洗剤は使わないのが基本!その理由
ビアレッティの普段のお手入れでは、洗剤を使わないのが一般的です。 これは、使い込むうちに本体内部に付着していくコーヒーの油分を洗い流してしまわないためです。
このコーヒーの油分は「コーヒーオイル」とも呼ばれ、ビアレッティの内部をコーティングする役割を果たします。このオイルの膜が、アルミ特有の金属臭がコーヒーに移るのを防ぎ、同時にビアレッティ自体にコーヒーの香りを馴染ませてくれるのです。 つまり、使い込むほどに器具が育ち、より味わい深いコーヒーが淹れられるようになります。 イタリアの家庭では、この使い込まれたビアレッティを嫁入り道具にすることもあるそうです。
ただし、長期間使わずにいてカビが発生してしまった場合や、どうしても汚れが気になる場合は、中性洗剤を使って丁寧に洗浄してください。その際は、洗浄後に再度コーヒー豆を使った「ならし作業」を行うと良いでしょう。
定期的にチェックしたいパッキンとフィルター
普段のお手入れに加えて、定期的にチェックしたいのが「ゴムパッキン」と「フィルタープレート」です。これらはサーバーの裏側についており、取り外して洗浄することができます。
ゴムパッキンは、使っているうちにだんだんと硬化したり、ひび割れたりしてきます。劣化すると気密性が保てなくなり、蒸気漏れの原因になります。1年に1回程度を目安に状態を確認し、弾力性がなくなっていたら交換しましょう。パッキンはスプーンの柄などを使うと簡単に外せます。
フィルタープレートの穴も、細かいコーヒー粉で詰まることがあります。定期的(月に1回程度)に取り外して、裏側からもしっかりと水洗いすることで、常にクリーンな状態で抽出を行うことができます。
ビアレッティの最初の使い方まとめ
この記事では、ビアレッティを初めて使う方に向けて、その魅力から最初の準備、基本的な使い方、美味しく淹れるコツ、そして長く使うためのお手入れ方法までを詳しく解説しました。
まず大切なのは、購入後すぐに行う「ならし作業」です。洗剤で洗浄した後、コーヒー豆を使って数回「捨て淹て」をすることで、金属臭を取り除き、器具をコーヒーの風味に馴染ませます。
基本的な使い方は、ボイラーに水を入れ、バスケットに細挽きのコーヒー粉をセットし、本体をしっかり締めて弱火にかけるだけです。 「ボコボコ」という音が抽出完了の合図です。
コーヒー豆の挽き具合や火加減を調整したり、使用後に洗剤を使わず水洗いすることで器具を育てていったりと、使い込むほどに愛着が湧き、自分好みの味を追求できるのがビアレッティの醍醐味です。
この記事を参考に、ぜひご家庭でビアレッティを使った豊かなコーヒータイムをお楽しみください。
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