タイのコーヒー豆、その魅力に迫る!産地の特徴から美味しい淹れ方まで徹底解説

コーヒー豆の知識

「タイ」と聞いて、多くの人が思い浮かべるのは、美しいビーチや歴史的な寺院、そしてスパイシーなタイ料理かもしれません。しかし、近年、タイは上質なコーヒー豆を生産する国としても世界中から注目を集めています。かつては国内消費がほとんどで、日本ではあまり馴染みのなかったタイのコーヒー豆ですが、その品質は目覚ましい向上を遂げ、今ではスペシャルティコーヒーの世界でも高く評価されるようになりました。この記事では、そんなタイ産コーヒー豆が持つ独特の魅力、その背景にある歴史、そしてご家庭で美味しく楽しむためのポイントまで、わかりやすくご紹介します。あなたもきっと、タイコーヒーの奥深い世界に魅了されるはずです。

タイにおけるコーヒー豆栽培の歴史と現在

タイでのコーヒー栽培は、国の歴史や文化と深く結びついています。特に、王室が主導したプロジェクトは、タイのコーヒー産業を大きく変えるきっかけとなりました。

アヘン栽培からの転換という歴史

かつて、タイ北部の山岳地帯は「黄金の三角地帯(ゴールデントライアングル)」の一部として知られ、世界有数のアヘン(麻薬の原料)の栽培地でした。 この地域に暮らす少数民族は、貧困からアヘンの原料となるケシの栽培をせざるを得ない状況にありました。 しかし、この状況は人々の健康を蝕み、深刻な社会問題となっていました。 この問題を解決するために、コーヒー栽培が代替作物として注目されたのです。コーヒーの木は森林環境で栽培できるため、環境保護にもつながります。 また、品質に応じた安定した収入を得られることから、アヘン栽培に代わる持続可能な産業として期待されました。

タイ王室のロイヤルプロジェクト

アヘン栽培からの転換を強力に推し進めたのが、タイ王室でした。特に、故プミポン前国王(ラーマ9世)は、この問題に深く心を痛め、1969年から「ロイヤルプロジェクト」を立ち上げました。 このプロジェクトは、ケシの代替作物を研究・開発し、山岳民族の生活向上と自立を支援することを目的としていました。 その中で、コーヒーは非常に重要な作物と位置づけられ、栽培技術の指導やインフラ整備などが積極的に行われました。この王室主導の取り組みにより、多くの農家がアヘン栽培からコーヒー栽培へと転換し、タイ北部は高品質なアラビカコーヒーの産地として生まれ変わったのです。

現在の生産状況と世界的な評価

タイ王室のプロジェクトの成功により、タイのコーヒー生産は大きく発展しました。現在、タイはアジアでも有数のコーヒー生産国となっており、特に北部で栽培されるアラビカ種は、その品質の高さから国際的に評価されています。 「ドイトゥンコーヒー」や「ドイチャンコーヒー」といったブランドは、タイを代表するコーヒーとして世界中に知られています。 近年では、品質向上への意識がさらに高まり、栽培方法や精製方法にこだわった「スペシャルティコーヒー」の生産も盛んに行われるようになりました。 これにより、タイのコーヒー豆は、JALの機内食に採用されるなど、ますますその存在感を高めています。

タイ産コーヒー豆の主な産地とそれぞれの特徴

タイのコーヒー豆は、主に北部と南部で栽培されており、地域によって気候や土壌が異なるため、それぞれに個性豊かな味わいが生まれます。

北部:チェンマイ

チェンマイ県は、タイにおけるアラビカ種栽培発祥の地ともいえる重要な産地です。 ドイサケット地方などを中心に、多くのコーヒー農園が点在しています。 標高が高く冷涼な気候は、高品質なアラビカ種の栽培に非常に適しており、ここで生産されるコーヒーは、華やかな香りとクリーンな酸味、そしてしっかりとした甘みが特徴です。近年では、スペシャルティコーヒーの生産にも力を入れており、農園ごとに独自の栽培方法や精製方法を追求することで、多様で個性的なフレーバーが生み出されています。 チェンマイ市内には、こだわりのコーヒーを提供するカフェも多く、産地ならではの新鮮なコーヒーを楽しむことができます。

北部:チェンライ

チェンライ県もまた、タイを代表する高品質なコーヒーの産地です。 ミャンマーやラオスと国境を接するこの地域は、かつての「黄金の三角地帯」の中心地でもありました。 現在では、山岳地帯の豊かな自然環境を活かしたコーヒー栽培が盛んに行われています。 特にドイチャンやドイパンコンといった地域は、その品質の高さで世界的に知られています。 チェンライ産のコーヒーは、ナッツのような香ばしさやチョコレートを思わせるコク、そしてスパイシーな風味が特徴的です。 完熟した果実のような甘みも感じられ、バランスの取れた味わいが多くのコーヒーファンを魅了しています。

南部:チュンポーン

タイ南部では、主にロブスタ種のコーヒーが栽培されています。 中でもチュンポーン県は、南部における主要なコーヒー産地の一つです。南部は北部と比べて雨量が多く、年間を通して高温多湿な気候が特徴です。 このような環境は、病害虫に強くたくましいロブスタ種の栽培に適しています。 南部で生産されるロブスタ種は、しっかりとした苦味と深いコク、そして独特の香ばしさを持っています。酸味はほとんど感じられません。 これらの特徴から、主にインスタントコーヒーの原料や、ブレンドコーヒーに力強さを加える目的で使用されることが多いです。

その他の注目産地

チェンマイやチェンライ以外にも、タイ北部には魅力的なコーヒー産地が存在します。例えば、メーホンソーン県やナーン県などでも、近年品質の高いコーヒーが生産されるようになってきています。これらの地域では、アカ族などの山岳民族が伝統的な農法を守りながら、丁寧にコーヒーを栽培しています。 彼らの作るコーヒーは、その土地ならではのテロワール(土壌や気候などの生育環境がもたらす個性)を色濃く反映しており、ユニークな味わいを楽しむことができます。こうした小規模な農園から生まれるスペシャルティコーヒーは、タイコーヒーの新たな可能性として注目を集めています。

タイで栽培されるコーヒー豆の品種と味わい

タイでは主に2つの品種のコーヒー豆が栽培されており、それぞれ異なる特徴を持っています。品種ごとの味わいの違いを知ることで、より深くタイコーヒーを楽しむことができます。

主流のアラビカ種

現在、タイのコーヒー生産、特に高品質なコーヒー市場において主流となっているのがアラビカ種です。 世界のコーヒー生産量の約6割から7割を占めるこの品種は、繊細で複雑な風味と豊かな香りを持つことで知られています。 アラビカ種は、涼しい高地での栽培を好み、病害虫に弱いなどデリケートな性質を持っていますが、その分、丁寧に育てられた豆は素晴らしい品質になります。 タイ北部、特にチェンマイやチェンライの山岳地帯は、このアラビカ種の栽培に最適な環境です。タイ産のアラビカ種は、一般的にフローラルな香り、柑橘系やベリー系の果実を思わせる爽やかな酸味、そしてキャラメルやハチミツのような甘い後味が特徴です。産地や精製方法によって、その風味はさらに多様に変化します。

南部で栽培されるロブスタ種

一方、タイ南部を中心に栽培されているのがロブスタ種です。 その名の通り「強健」な性質を持ち、高温多湿な気候や病害虫に強いのが特徴です。 このため、アラビカ種よりも栽培が容易で、標高の低い地域でも育てることができます。 味わいの面では、アラビカ種とは対照的です。ロブスタ種は、ガツンとくる力強い苦味と深いコク、そして麦茶のような香ばしい香りを持っています。 酸味はほとんどなく、カフェインの含有量がアラビカ種よりも多い傾向にあります。 そのままストレートで飲むよりも、独特の風味を活かしてブレンドコーヒーに加えられたり、濃厚な味わいが求められるインスタントコーヒーやエスプレッソに使用されたりすることが多い品種です。

近年注目のスペシャルティコーヒー

近年、タイでは「スペシャルティコーヒー」と呼ばれる、特に品質の高いコーヒー豆の生産に力が入れられています。 スペシャルティコーヒーとは、豆の栽培からカップに注がれるまで、すべての工程において徹底した品質管理が行われたコーヒーのことです。生産者や農園、栽培品種、精製方法といった情報が明確にされており、豆が持つ個性的な風味を最大限に楽しむことができます。タイのスペシャルティコーヒーは、そのほとんどがアラビカ種であり、生産者たちの情熱と努力によって、驚くほど多様で複雑なフレーバーが生み出されています。 例えば、完熟バナナやイチゴ、ブルーベリーといったトロピカルフルーツのような風味や、ウイスキーのような芳醇な香りを持つものまであります。 こうしたユニークなコーヒーの登場が、タイを新たなコーヒー産地として世界に知らしめる原動力となっています。

美味しいタイ産コーヒー豆の選び方

数あるタイ産コーヒー豆の中から、自分好みのものを見つけるためのポイントをいくつかご紹介します。焙煎度合いや精製方法など、少し専門的に感じるかもしれませんが、基本的な知識があればコーヒー選びがもっと楽しくなります。

焙煎度合いで選ぶ

コーヒー豆の味わいを大きく左右するのが「焙煎」です。焙煎とは、生のコーヒー豆を煎る加熱作業のことで、この工程によってコーヒー特有の色や香り、苦味、酸味が生まれます。 焙煎の度合いは、大きく分けて「浅煎り」「中煎り」「深煎り」の3つに分類できます。

・浅煎り(ライトロースト):豆本来のフルーティーな酸味や華やかな香りが最も際立ちます。タイ産アラビカ種の持つ爽やかな風味を楽しみたい方におすすめです。
・中煎り(ミディアムロースト):酸味と苦味のバランスが良く、マイルドな味わいが特徴です。香り、コク、甘みのバランスが取れているため、初めてタイコーヒーを試す方にも飲みやすいでしょう。
・深煎り(ダークロースト):苦味が強く、しっかりとしたコクと香ばしさが楽しめます。ミルクや砂糖との相性も抜群で、カフェオレやエスプレッソで楽しみたい場合に適しています。

### 精製方法(プロセス)で選ぶ
精製方法(プロセス)とは、収穫したコーヒーチェリー(果実)から生豆を取り出す工程のことで、この方法の違いもコーヒーの風味に大きな影響を与えます。 主な精製方法には以下のようなものがあります。

・ウォッシュド(水洗式):コーヒーチェリーの果肉を機械で除去した後、水槽に入れて発酵させ、粘液質を洗い流してから乾燥させる方法です。雑味が少なく、クリーンでスッキリとした酸味が特徴的な味わいになります。
・ナチュラル(非水洗式):収穫したコーヒーチェリーを果肉のまま天日乾燥させた後、まとめて脱穀する方法です。果実の甘みが豆に移るため、フルーティーで甘い香りが豊かになり、独特の風味が生まれます。
・ハニープロセス:ウォッシュドとナチュラルの中間のような方法で、果肉を除去した後、豆の周りについている粘液質(ミューシレージ)を残したまま乾燥させます。ミューシレージの量によって甘みの度合いが変わり、ハチミツのような甘さとまろやかな口当たりが特徴です。

信頼できるお店やブランドを見つける

美味しいコーヒー豆を手に入れるためには、どこで買うかも重要です。自家焙煎を行っている専門店では、新鮮で品質の高い豆を取り扱っていることが多いです。 バンコクやチェンマイなどの都市部には、タイ産のスペシャルティコーヒーを専門に扱うカフェやロースターがたくさんあります。 こうしたお店では、豆の種類や特徴について詳しく説明してくれるので、自分の好みを伝えながら相談してみるのも良いでしょう。また、日本国内でも、タイ産のコーヒー豆を扱うオンラインショップが増えてきています。 「ドイトゥン」や「ドイチャン」といった有名ブランドから探してみるのも一つの方法です。口コミやレビューを参考にしながら、信頼できるお店を見つけてみてください。

タイコーヒーの楽しみ方と淹れ方のコツ

お気に入りのタイ産コーヒー豆を手に入れたら、次は美味しく淹れてみましょう。基本的な淹れ方から、タイならではの飲み方まで、いくつかの楽しみ方をご紹介します。

基本的なドリップコーヒーの淹れ方

タイコーヒー豆の持つ繊細な香りや酸味、甘みを引き出すには、ハンドドリップがおすすめです。基本的な淹れ方のポイントは以下の通りです。

1. 豆を挽く:コーヒーを淹れる直前に、その都度豆を挽くのが理想です。 中挽きが一般的ですが、お好みで調整してください。
2. お湯を準備する:お湯の温度は90℃前後が目安です。沸騰したお湯を少し冷ましてから使いましょう。
3. 蒸らし:ドリッパーにペーパーフィルターと粉をセットし、少量のお湯を注いで30秒ほど蒸らします。この工程で粉全体にお湯が行き渡り、成分が抽出しやすくなります。
4. 抽出する:中心から「の」の字を描くように、数回に分けてお湯を注ぎます。お湯がフィルターに直接かからないように、また一度に注ぎすぎないように注意しましょう。目標の抽出量に達したら、ドリッパーを外して完成です。

タイ式コーヒー「カフェ・ボラーン」とは?

タイには、「カフェ・ボラーン」と呼ばれる昔ながらの伝統的なコーヒーがあります。 「ボラーン」はタイ語で「昔ながらの」という意味です。 これは、深煎りに焙煎したコーヒー豆(トウモロコシや大豆などを一緒に焙煎することもある)を布製のフィルターで濃く抽出し、たっぷりのコンデンスミルク(練乳)とエバミルク(無糖練乳)を加えて飲む、非常に甘いアイスコーヒーです。 街中の屋台などでよく見かけるこのスタイルは、タイのローカルな雰囲気を味わうのにぴったりです。 独特の香ばしさと濃厚な甘さは、一度試してみる価値があります。ご家庭で再現する場合は、深煎りのコーヒーを濃いめに淹れ、コンデンスミルクと牛乳で甘さを調整してみてください。

アイスコーヒーで楽しむタイコーヒー

温暖な気候のタイでは、アイスコーヒーも非常に人気です。タイのアラビカ種は、アイスにしてもそのフルーティーな風味や爽やかな酸味が引き立ち、すっきりと楽しむことができます。美味しいアイスコーヒーを淹れるコツは、通常のホットコーヒーよりも粉を多めに使い、濃いめに抽出することです。抽出した熱いコーヒーを、氷をたっぷり入れたグラスに一気に注ぎ、急冷することで、香り高くクリアな味わいのアイスコーヒーが出来上がります。 抽出したコーヒーをゆっくり冷ますと、風味が落ちて濁りの原因になるので注意しましょう。お好みでガムシロップやミルクを加えても美味しくいただけます。

まとめ:魅力あふれるタイのコーヒー豆を味わおう

この記事では、タイ産コーヒー豆の魅力について、その歴史的背景から産地の特徴、品種、そして美味しい楽しみ方まで、幅広くご紹介しました。かつてアヘン栽培地だった山岳地帯が、王室のプロジェクトによって高品質なコーヒーの一大産地へと生まれ変わった物語は、タイコーヒーの味わいにさらなる深みを与えています。 北部のチェンマイやチェンライで育まれるアラビカ種は、華やかな香りとフルーティーな酸味が特徴であり、スペシャルティコーヒーとしても世界的な評価を獲得しています。 一方で、南部で栽培されるロブスタ種は、力強い苦味とコクが魅力です。 焙煎度合いや精製方法によっても風味は大きく変わるため、自分好みの豆を見つける楽しみもあります。ぜひ、この記事を参考に、奥深いタイコーヒーの世界を体験してみてください。

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