フレンチプレスで淹れたコーヒーの豊かな香りと味わいは格別ですよね。しかし、インターネット上では「フレンチプレスは体に悪い」という噂もささやかれています。特にコレステロール値への影響が心配されているようですが、本当にそうなのでしょうか。
この記事では、フレンチプレスが体に悪いと言われる理由から、その科学的な根拠、そして健康への影響を抑えながら美味しく楽しむための具体的な方法まで、詳しく解説していきます。フレンチプレスのコーヒーが好きな方も、これから試してみたい方も、ぜひ安心して楽しむための知識を深めていきましょう。
フレンチプレスが体に悪いと言われる本当の理由
フレンチプレスで淹れたコーヒーが体に悪いと言われる背景には、特定の成分が関係しています。金属フィルターを使ってコーヒー豆の成分を丸ごと抽出する方法だからこそ、体に影響を与えうる物質もカップに含まれやすくなるのです。ここでは、その主な理由について掘り下げていきます。
コーヒーオイルに含まれる「ジテルペン」とは?
フレンチプレスで淹れたコーヒーの表面に浮かぶ油分、これが「コーヒーオイル」です。このオイルには、「ジテルペン」という成分が含まれています。 ジテルペンは、カフェストールとカウェオールという2つの物質の総称で、コーヒー豆に含まれる脂質の一種です。
これらは水に溶けにくく油に溶けやすい性質(脂溶性)を持っています。 アラビカ種のコーヒー豆に比較的多く含まれていることが知られています。 ジテルペンは、コーヒー豆の種類によって含まれる濃度が異なりますが、フレンチプレスのようにコーヒーの成分を直接抽出する方法では、このコーヒーオイルごとカップに注がれることになります。 このジテルペンこそが、「フレンチプレスは体に悪い」と言われる中心的な要因なのです。
ジテルペンがコレステロール値に与える影響
研究により、ジテルペン類、特にカフェストールとカウェオールは、血中のコレステロール値を上昇させる可能性があると報告されています。 具体的には、LDL(悪玉)コレステロールの値を上げ、HDL(善玉)コレステロールの値をわずかに下げる作用が指摘されています。 肝臓にはコレステロールを分解する酵素がありますが、ジテルペンはこの酵素の働きを妨げる作用があるとされています。
の結果、血中のコレステロール値が上昇し、高脂血症につながる可能性が考えられています。 実際に、フィルターを使わないコーヒーを1日に5杯、4週間飲み続けたところ、コレステロール値が上昇したという研究結果もあります。 このように、ジテルペンがコレステロール値に与える影響が、健康への懸念点として挙げられているのです。
なぜフレンチプレスだとジテルペンが多くなるのか?
では、なぜフレンチプレスで淹れるとジテルペンの量が多くなるのでしょうか。その理由は、抽出方法にあります。フレンチプレスは、コーヒー粉をお湯に浸して成分を抽出し、金属製のフィルターで粉を濾すという「浸漬式」です。 この金属フィルターは目が粗いため、コーヒーオイルや微粉をほとんど通してしまいます。 その結果、ジテルペンを含むコーヒーオイルが、そのままカップに注がれることになるのです。 ある研究では、フレンチプレスで淹れたコーヒーに含まれるジテルペンの量は、ペーパーフィルターで淹れた場合に比べて約30倍も多いという報告もあります。 このように、フィルターの種類の違いが、コーヒーに含まれるジテルペンの量を大きく左右しているのです。
【徹底比較】フレンチプレスは他の淹れ方より体に悪い?
フレンチプレスが体に悪いと言われる原因はジテルペンにありますが、他の抽出方法と比べるとどうなのでしょうか。ここでは、代表的なコーヒーの淹れ方である「ペーパードリップ」「エスプレッソ」「インスタントコーヒー」と、健康への影響という観点から比較してみましょう。
ペーパードリップとの違い
ペーパードリップは、紙製のフィルターを使ってコーヒーを抽出する方法です。 このペーパーフィルターが、フレンチプレスとの大きな違いを生み出します。紙のフィルターは目が細かいため、コーヒーの微粉だけでなく、健康への影響が懸念されるジテルペンの大部分を吸着し、取り除いてくれます。 その結果、ペーパードリップで淹れたコーヒーは、ジテルペンの含有量が極めて低くなります。 研究によっては、フィルターで濾過したコーヒーを飲む人は、飲まない人に比べて全死亡リスクが15%低いという報告もあり、健康的な飲み方として注目されています。 味の面では、フレンチプレスが豆本来の油分や風味をダイレクトに味わえるのに対し、ペーパードリップはクリアですっきりとした味わいになる傾向があります。
エスプレッソとの違い
エスプレッソは、専用のマシンで高い圧力をかけて短時間で抽出する方法です。エスプレッソも金属製のフィルターを使用するため、ペーパードリップに比べるとジテルペンの含有量は多くなる傾向にあります。 ただし、フレンチプレスのように長時間お湯に浸すわけではないため、その含有量にはばらつきが見られます。 フレンチプレスや北欧式の煮出しコーヒーは、特にジテルペンの含有量が高い(1杯あたり6〜12mg)とされていますが、エスプレッソもそれに次ぐレベルです。 カフェラテやカプチーノのベースとして使われることが多いですが、エスプレッソを日常的に多く飲む場合は、フレンチプレスと同様にコレステロール値への影響を考慮する必要があるかもしれません。
インスタントコーヒーとの違い
手軽さが魅力のインスタントコーヒーは、一度抽出したコーヒー液を乾燥させて粉末にしたものです。 その製造過程でコーヒーオイルがほとんど除去されるため、ジテルペンの含有量は非常に少ないとされています。 そのため、コレステロール値への影響を心配する必要はほとんどないと言えるでしょう。 しかし、フレンチプレスで味わえるような、豆本来の豊かな香りやオイルのコクは期待できません。手軽さをとるか、風味をとるか、あるいは健康への影響を考慮するかによって、選択肢は変わってきます。ジテルペンの摂取を最も手軽に避けたい場合には、インスタントコーヒーは有効な選択肢の一つです。
フレンチプレスが体に悪いとされる具体的な健康リスク
フレンチプレスによって多く抽出されるジテルペンが、私たちの体にどのような具体的なリスクをもたらす可能性があるのでしょうか。ここでは、特に指摘されているLDL(悪玉)コレステロールの上昇、心血管疾患のリスク、そして肝臓への影響について、現在の研究で分かっていることを解説します。
LDL(悪玉)コレステロールの上昇
最も懸念されているのが、LDL(悪玉)コレステロール値の上昇です。 コレステロール自体は細胞膜の材料になるなど、体に必要な脂質の一種です。 しかし、LDLコレステロールが増えすぎると、血管の壁に蓄積してプラークを形成し、動脈硬化の原因となります。 動脈硬化が進行すると、血管が狭くなったり弾力性を失ったりして、血流が悪くなります。 フレンチプレスに含まれるジテルペン(カフェストールとカウェオール)は、このLDLコレステロールを増加させる作用があることが、複数の研究で示されています。 日常的にフィルターを使わないコーヒーを飲む人は、コレステロール値が高い傾向にあるという報告もあり、注意が必要です。
長期的な飲用と心血管疾患のリスク
LDLコレステロール値の上昇は、長期的には心血管疾患のリスクを高める要因となります。動脈硬化が進行すると、心臓に血液を送る冠動脈が狭くなる狭心症や、完全に詰まってしまう心筋梗塞、さらには脳の血管が詰まる脳卒中などを引き起こす可能性があります。 ある大規模な研究では、フィルターで濾過しないコーヒーを1日に9杯以上飲む人は、死亡リスクが最も高かったという結果が報告されています。 一方で、フィルターで濾過したコーヒーを1日に1〜4杯飲む人では、心血管疾患による死亡リスクが最も低かったことも示されています。 このことから、コーヒーの抽出方法が、長期的な心臓の健康に影響を与える可能性が示唆されています。
肝臓への影響についての研究
ジテルペンは、肝臓でのコレステロール代謝に影響を与えることが分かっています。 具体的には、コレステロールを分解する酵素の働きを阻害することで、血中のコレステロール値を上昇させると考えられています。 一方で、コーヒー自体は、適量であれば肝がんの発生リスクを下げるという研究結果も報告されています。 また、ジテルペンには抗炎症作用や抗酸化作用といった、体にとって有益な効果を持つ可能性も指摘されており、一概に「体に悪い」と断定することはできません。 とはいえ、コレステロール値が高めの方や、肝臓に何らかの不安を抱えている方は、フレンチプレスコーヒーの飲用量や頻度について、かかりつけの医師に相談してみるのが賢明でしょう。
体に悪い影響を最小限に!フレンチプレスを安心して楽しむ方法
フレンチプレスコーヒーが持つ健康への懸念点について解説してきましたが、飲み方を少し工夫するだけで、そのリスクを抑えながら美味しさを楽しむことができます。「好きだけど、体に悪いならやめた方がいいのかな…」と諦める前に、ぜひ試してほしい方法を3つご紹介します。
飲む量や頻度を調整する
最もシンプルで効果的な方法は、飲む量や頻度をコントロールすることです。研究では、フィルターを通さないコーヒーの過剰な摂取がコレステロール値の上昇と関連していることが示されています。 1日に何杯も飲む習慣がある方は、まずは1〜2杯程度に減らしてみることから始めましょう。 毎日飲むのではなく、週末のご褒美にするなど、頻度を調整するのも良い方法です。また、他の日にはペーパードリップで淹れるなど、抽出方法を使い分けることで、ジテルペンの総摂取量を抑えることができます。 適量を守ることが、フレンチプレスと長く付き合っていくための第一歩です。
コーヒー豆の選び方(焙煎度など)
コーヒー豆の選び方も、健康への影響を考える上で一つのポイントになります。ジテルペンの含有量は、コーヒー豆の種類によって異なると言われています。 また、焙煎度によっても成分は変化します。一般的に、中深煎りから深煎りの豆がフレンチプレスには向いているとされていますが、自分の体調や好みに合わせて色々な豆を試してみるのも良いでしょう。 さらに、質の良い新鮮な豆を選ぶことも大切です。 古くなって酸化した豆は、風味だけでなく、体への負担も大きくなる可能性があります。 信頼できるコーヒーショップで、豆の産地や特徴について相談しながら選ぶのも楽しい時間になるはずです。
ペーパーフィルターを併用する裏技
フレンチプレスの濃厚な味わいは好きだけれど、どうしてもジテルペンが気になるという方には、ペーパーフィルターを併用する裏技がおすすめです。やり方は簡単で、抽出を終えたフレンチプレスのコーヒーを、カップに注ぐ際にペーパーフィルターで濾すだけです。一手間かかりますが、これによりジテルペンの大部分を取り除くことができ、ペーパードリップに近いクリアな味わいになります。フレンチプレスの良さである「誰でも安定した抽出ができる」というメリットはそのままに、健康リスクだけを軽減できる一石二鳥の方法と言えるでしょう。フレンチプレスの金属フィルターの代わりに、専用のペーパーフィルターが販売されている場合もありますので、探してみるのも良いかもしれません。
体に悪いだけじゃない!フレンチプレスコーヒーの魅力
これまでフレンチプレスが体に悪いとされる側面を詳しく見てきましたが、もちろん魅力的な点もたくさんあります。世界中で愛され続けているのには、相応の理由があるのです。ここでは、多くのコーヒー愛好家を惹きつけてやまない、フレンチプレスならではのメリットをご紹介します。
豆本来の味と香りをダイレクトに楽しめる
フレンチプレスの最大の魅力は、なんといってもコーヒー豆が持つ本来の味わいと香りを余すことなく楽しめる点です。 ペーパードリップでは吸着されてしまうコーヒーオイルを丸ごと抽出するため、豆の個性や風味がダイレクトにカップに現れます。 その結果、口当たりはまろやかで、重厚感のあるリッチな味わいになります。 普段飲んでいる豆でも、フレンチプレスで淹れてみると「こんな香りや甘みがあったのか」と新たな発見があるかもしれません。質の良いスペシャルティコーヒーの個性を最大限に引き出したい時には、特におすすめの抽出方法です。
手軽で初心者でも始めやすい
「美味しいコーヒーを淹れるのは難しそう」と思っている方にこそ、フレンチプレスはおすすめです。ハンドドリップのように、お湯を注ぐ技術や経験はほとんど必要ありません。 コーヒーの粉とお湯の量、そして抽出時間をきちんと計さえすれば、誰でも毎回安定した美味しさを再現することができます。 器具の構造もシンプルで、ガラスポットとプランジャー(プレスする棒)だけなので、扱いやすいのも嬉しいポイントです。 忙しい朝でも、お湯を注いで4分待つだけで、本格的なコーヒーが完成します。 この手軽さが、フレンチプレスが世界中で長く愛用されている理由の一つです。
繰り返し使えて環境にやさしい
フレンチプレスは、ペーパーフィルターを使い捨てる必要がないため、環境にやさしく経済的です。金属製のフィルターは、洗って繰り返し使うことができます。ゴミが減らせるだけでなく、ペーパーフィルターを買い置きしておく手間やコストもかかりません。また、器具本体も丈夫なガラスやステンレスでできているものが多く、大切に使えば長く愛用することができます。 最近では、サステナビリティ(持続可能性)への関心が高まっていますが、そうした観点からもフレンチプレスは時代に合った抽出器具と言えるでしょう。日々のコーヒータイムを楽しみながら、少しだけ環境に貢献できるのも、フレンチプレスの隠れた魅力です。
まとめ:フレンチプレスは本当に体に悪いのか?賢い付き合い方を知ろう
この記事では、「フレンチプレスは体に悪い」というキーワードを軸に、その理由や健康への影響、そして安心して楽しむための方法を解説してきました。
フレンチプレスが体に悪いと言われる主な理由は、コーヒーオイルに含まれる「ジテルペン」という成分が、血中のLDL(悪玉)コレステロール値を上昇させる可能性があるためです。 これは、目の粗い金属フィルターで抽出することで、ジテルペンがペーパーフィルターのように濾されずにカップに入るためです。
しかし、これはあくまで「過剰に摂取した場合」のリスクであり、フレンチプレス自体が絶対的に悪いわけではありません。飲む量を1日1〜2杯にする、毎日ではなく時々楽しむようにするなど、量や頻度を調整すれば、リスクは大幅に軽減できます。 また、抽出後にペーパーフィルターで濾すといった工夫も有効です。
何よりも、フレンチプレスには豆本来の豊かな風味をダイレクトに味わえるという、他の抽出方法にはない大きな魅力があります。 その特性を正しく理解し、自分の体調やライフスタイルに合わせて上手に付き合っていくことが大切です。この記事が、皆さんのコーヒーライフをより豊かにするための一助となれば幸いです。
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