「モカマタリ」と検索すると、関連キーワードに「まずい」と表示されて、購入をためらっている方もいるのではないでしょうか。独特の風味を持つモカマタリは、「コーヒーの貴婦人」とも呼ばれる一方で、その個性の強さから評価が分かれやすい銘柄です。しかし、まずいと感じるのには、豆の品質や焙煎、淹れ方など、いくつかの理由が考えられます。
この記事では、なぜモカマタリがまずいと言われることがあるのかを深掘りし、その本来の魅力的な味わいや、美味しく楽しむための選び方、淹れ方のコツを初心者にも分かりやすく解説します。この記事を読めば、モカマタリへの誤解が解け、その奥深い世界を存分に楽しめるようになるはずです。
モカマタリがまずいと言われる衝撃の理由
モカマタリが「まずい」と感じられる背景には、その個性的な風味や生産過程に起因するいくつかの理由があります。多くのコーヒー愛好家を魅了する一方で、なぜ一部では敬遠されてしまうのでしょうか。ここでは、その主な理由を4つのポイントから解説します。
理由1:独特の強い酸味が苦手
モカマタリの最大の特徴は、フルーティーで華やかな酸味です。 この酸味は「熟したフルーツのよう」あるいは「ワインのよう」と表現されることもあり、上質なものであれば爽やかで心地よい甘みを伴います。 しかし、普段あまり酸味のあるコーヒーを飲まない方や、深煎りのどっしりとした苦味を好む方にとっては、この酸味が「すっぱい」「尖っている」と感じられ、「まずい」という評価につながることがあります。 コーヒーの酸味は、豆が持つ本来の果実味に由来するものであり、品質の劣化による酸っぱさとは異なります。この違いを理解せずに飲むと、予期せぬ味わいに驚いてしまうかもしれません。
理由2:品質の低い豆や古い豆を選んでしまった
モカマタリは、イエメンの伝統的な農法で生産されています。 小規模な農家が多く、住居の屋根の上などでコーヒーチェリーを天日乾燥させるなど、原始的な方法で精製が行われています。 そのため、乾燥にムラができたり、未熟な豆や虫食い豆などの欠点豆が混入しやすかったりする傾向があります。 こうした品質の低い豆が混ざっていると、雑味や不快な味の原因となり、モカマタリ本来の風味を損なってしまいます。 また、コーヒー豆は生鮮食品と同じで、焙煎してから時間が経つほど風味が落ち、酸化による嫌な酸味が出てきます。古い豆を選んでしまうことも、まずいと感じる一因です。
理由3:焙煎度合いが好みと合っていない
コーヒー豆は、焙煎度合いによって味わいが大きく変化します。 モカマタリの持つ華やかな香りとフルーティーな酸味を最も楽しむには、中煎り(ハイローストからシティロースト)がおすすめとされています。 浅煎りにすると酸味が際立ち、逆に深煎りにすると酸味が抑えられて苦味とコクが強くなります。 もし、酸味が苦手な方が浅煎りのモカマタリを飲むと、酸っぱさが強調されすぎて「まずい」と感じるでしょう。 逆に、しっかりとした苦味を期待して深煎りを試したものの、スモーキーな風味が強すぎて「炭のよう」と感じてしまうケースもあります。 自分の好みに合った焙煎度合いを選べていないことが、美味しさを感じられない原因になるのです。
理由4:淹れ方が適切でない
豆の品質や焙煎が良くても、淹れ方ひとつでコーヒーの味は大きく変わります。例えば、抽出するお湯の温度が高すぎると、コーヒーの雑味や過度な苦味が出やすくなります。逆に温度が低すぎると、成分が十分に抽出されず、ぼやけた味になりがちです。また、豆の挽き方が粗すぎたり細かすぎたりしても、味のバランスが崩れてしまいます。 特にモカマタリのような個性的な豆は、その特徴を最大限に引き出すための適切な淹れ方があります。ハンドドリップ、フレンチプレス、水出しなど、抽出方法によっても味わいが変わるため、豆の特性に合わない淹れ方をしてしまうと、本来の美味しさを体験できず「まずい」という結論に至ってしまう可能性があります。
「まずい」は誤解?本当のモカマタリの味と香り
「まずい」という声も聞かれるモカマタリですが、それはあくまで一面的な評価にすぎません。本来のモカマタリは、他のコーヒー豆にはない、唯一無二の魅力的な香味を持っています。ここでは、その本当の姿、多くのコーヒーファンを虜にする味と香りについてご紹介します。
華やかでフルーティーな香り
モカマタリの最大の魅力の一つが、その華やかで複雑な香りです。 袋を開けた瞬間から、まるでフルーツや花のような甘い香りが広がります。 この香りは、「熟した果実のよう」や「ワインのよう」としばしば表現され、他のコーヒーとは一線を画す個性を持っています。 この独特のアロマは、イエメンの伝統的な非水洗式(ナチュラル)精製方法によって、コーヒーチェリーの果肉のフルーティーな成分が豆にじっくりと浸透することで生まれます。 豆を挽くとその香りはさらに際立ち、淹れている時間も至福のひとときとなるでしょう。
ワインにも似た芳醇なコクと甘み
モカマタリは、豊かな酸味だけでなく、しっかりとしたコクと甘みも兼ね備えています。 口に含むと、まずフルーティーな酸味が感じられますが、その後にワインを思わせるような芳醇なコクと、心地よい甘みが追いかけてきます。 この甘みは、砂糖のような直接的なものではなく、果物が持つような自然で上品な甘さです。標高1,000〜3,000mという高地の寒暖差の激しい環境でゆっくりと育つことで、豆の中に風味が凝縮され、この複雑で奥深い味わいが生まれるのです。 後味はすっきりとしており、いつまでも口の中に上品な香りの余韻が残ります。
上質な酸味の特徴
モカマタリの酸味は、ただ「すっぱい」だけではありません。上質なモカマタリの酸味は、非常に質が高く、爽やかで明るい印象を与えます。 オレンジやベリー系の果物を思わせるような、いきいきとした酸味で、不快な刺激は全くありません。 この酸味があるからこそ、後からくる甘みやコクが一層引き立ち、味わいに立体感と奥行きが生まれるのです。 コーヒーが温かい状態から冷めていく過程で、酸味の感じ方が変化していくのもモカマタリの楽しみ方の一つです。 温度が下がるにつれて、よりフルーティーさが際立ち、一杯で様々な表情を見せてくれます。 このような高品質な酸味こそが、モカマタリを「コーヒーの貴婦人」たらしめる所以なのです。
まずいモカマタリを避ける!美味しい豆の選び方
モカマタリ本来の美味しさを味わうためには、何よりもまず「良い豆」を選ぶことが重要です。品質の低い豆を選んでしまうと、「まずい」という残念な体験につながりかねません。ここでは、失敗しないための美味しいモカマタリの選び方を具体的に解説します。
信頼できる専門店で購入する
美味しいモカマタリを手に入れる最も確実な方法は、コーヒー豆の品質管理にこだわりを持つ信頼できる専門店で購入することです。専門店では、豆の仕入れルートがしっかりしており、品質の低い豆が混ざらないようにハンドピック(手作業で欠点豆を取り除くこと)を丁寧に行っていることが多いです。 また、専門店のスタッフはコーヒーに関する知識が豊富なので、自分の好みを伝えれば、最適な焙煎度合いや銘柄についてアドバイスをもらえます。注文を受けてから焙煎してくれるお店であれば、常に新鮮で香り高い状態の豆を手に入れることができるでしょう。
豆の生産地やグレードを確認する
モカマタリはイエメン産のコーヒー豆を指しますが、その中でも特にバニ・マタール地区で栽培されたものが高品質とされています。 また、モカマタリには品質による等級(グレード)が存在します。最も品質が高いとされるのが、大粒で欠点豆の少ない「アールマッカ」です。 その次に「No.9」「No.8」と数字でグレード分けされています。 日本で流通しているものの多くは「No.9」ですが、より上質な味わいを求めるなら、生産地や「アールマッカ」といったグレード表記に注目してみるのがおすすめです。 ただし、モカマタリは他の豆に比べてグレードが高いものでも欠点豆が混入しやすい特性があるため、やはり信頼できるお店選びが基本となります。
焙煎日をチェックして新鮮な豆を選ぶ
コーヒー豆は焙煎された瞬間から劣化が始まります。焙煎後の豆は、空気や湿気、光に触れることで酸化が進み、せっかくの風味が失われてしまいます。そのため、できるだけ焙煎日が新しい豆を選ぶことが、美味しいコーヒーを飲むための鉄則です。購入する際には、パッケージに焙煎日が記載されているかを確認しましょう。記載がない場合は、お店の人に尋ねてみるのが確実です。一般的に、焙煎後1ヶ月以内、できれば2週間以内に使い切るのが理想とされています。注文後に焙煎してくれる自家焙煎店などを利用するのも、新鮮な豆を手に入れる良い方法です。
自分の好みに合った焙煎度合いを知る
モカマタリは焙煎度合いによって味わいが大きく変わるため、自分の好みに合ったものを選ぶことが重要です。
・浅煎り:モカマタリ特有のフルーティーな酸味と華やかな香りを最も強く感じられます。酸味好きの方におすすめです。
・中煎り(ミディアムロースト、ハイロースト):酸味、甘み、コクのバランスが良く、モカマタリの魅力を総合的に楽しめます。 多くの専門店で推奨されており、初めての方にもおすすめです。
・中深煎り(シティロースト):酸味が和らぎ、代わりに香ばしさやコク、甘みが引き立ちます。酸味が少し苦手な方でも飲みやすい焙煎度合いです。
・深煎り:しっかりとした苦味とスモーキーな風味が特徴。酸味はほとんど感じられなくなります。
まずはバランスの取れた中煎りから試してみて、そこから自分の好みに合わせて浅煎りや深煎りに挑戦してみるのが良いでしょう。
「まずい」を「美味しい」に変える!モカマタリの淹れ方
せっかく良質なモカマタリの豆を手に入れても、淹れ方が適切でなければそのポテンシャルを十分に引き出すことはできません。「まずい」と感じる原因が、実は淹れ方にあったというケースも少なくありません。ここでは、モカマタリを最高に美味しく味わうための淹れ方のポイントを、抽出器具別にご紹介します。
ハンドドリップで淹れる場合のポイント
ハンドドリップは、最もポピュラーで、味の調整がしやすい抽出方法です。モカマタリの華やかな香りと繊細な味わいを引き出すのに適しています。
まず、豆の量は1杯分(約150cc)あたり10〜12gが目安です。挽き方は中細挽きが良いでしょう。
重要なのがお湯の温度。高すぎると雑味が出やすくなるため、90℃前後がおすすめです。沸騰したお湯を少し落ち着かせてから使いましょう。
淹れ方の手順は、まず少量のお湯を注いで30秒ほど蒸らします。 これにより、豆に含まれるガスが抜け、成分が抽出しやすくなります。その後、中心からのの字を描くように、数回に分けてお湯を注ぎます。この時、フィルターの側面に直接お湯をかけないように注意してください。抽出時間は全体で2分半から3分程度を目安に、サーバーに目標の量が落ちたら、ドリッパーにお湯が残っていても外すのがポイントです。 これにより、雑味の元となる過抽出を防ぎ、クリアな味わいに仕上がります。
フレンチプレスで豆本来の味を引き出す
フレンチプレスは、金属フィルターで直接コーヒーを濾すため、豆の油分(コーヒーオイル)まで余すことなく抽出できるのが特徴です。モカマタリが持つ芳醇なコクと甘み、豆本来の風味をダイレクトに味わいたい方におすすめです。
豆の挽き方は、ペーパードリップより少し粗めの「粗挽き」が基本です。細かすぎると、粉っぽさが残ってしまいます。豆の量とお湯の温度はハンドドリップと同様で構いません。
淹れ方は非常にシンプルです。容器に粉を入れ、お湯を注いで軽くかき混ぜます。蓋をして4分間待ち、時間が来たらプランジャーをゆっくりと押し下げて完成です。コーヒーオイルが含まれるため、口当たりはまろやかで、より複雑で力強い味わいを楽しめます。
水出しコーヒーで酸味をマイルドに
モカマタリの酸味がどうしても苦手、という方には水出しコーヒーがおすすめです。時間をかけて低温でゆっくり抽出することで、苦味や雑味、そして酸味の角が取れ、非常にまろやかでクリアな味わいになります。モカマタリの持つ甘みやフルーティーな香りはそのままに、ゴクゴク飲めるすっきりとしたコーヒーに仕上がります。
作り方は簡単で、水出し用のポットにコーヒー粉(中挽き〜粗挽き)と水を入れ、冷蔵庫で8〜12時間ほど置いておくだけです。専用の器具がなくても、お茶パックなどに粉を入れて麦茶ポットなどで代用できます。夏場はもちろん、一年を通して楽しめる飲み方です。
抽出温度とお湯の量の重要性
どの淹れ方にも共通して言えるのが、抽出温度とお湯の量(粉との比率)の重要性です。前述の通り、お湯の温度は90℃前後が基本ですが、もし酸味をもう少し抑えたい場合は少し高めの92℃、逆に酸味や香りをより引き出したい場合は少し低めの88℃など、微調整することで味わいをコントロールできます。
また、コーヒーの粉とお湯の比率も味を決める大切な要素です。薄すぎると物足りなく、濃すぎると豆の嫌な部分まで出てきてしまいます。まずは基本の比率(粉10gに対しお湯150〜160cc)で淹れてみて、そこから自分の好みに合わせて粉の量やお湯の量を調整してみてください。 こうした試行錯誤も、コーヒーの楽しみの一つです。
「まずい」と感じたモカマタリの活用法
せっかく購入したモカマタリが、どうしても口に合わず「まずい」と感じてしまった…。そんな時でも、すぐに諦めて捨ててしまうのはもったいないです。少しの工夫で、美味しく楽しめる方法がいくつかあります。ここでは、飲みきれずに困っているモカマタリを救済するための活用法をご紹介します。
ブレンドして味を調整する
もしモカマタリの酸味が強すぎると感じるなら、他のコーヒー豆とブレンドすることで、味わいをマイルドに調整することができます。おすすめは、苦味やコクがしっかりしていて酸味が少ない、ブラジルやコロンビア、マンデリンといった銘柄です。 モカマタリと他の豆を、例えば「1:2」や「1:3」の割合で混ぜて淹れてみてください。モカマタリの華やかな香りは活かしつつ、酸味の角が取れて全体のバランスが整い、非常に飲みやすい味わいになります。 どの豆と、どのくらいの比率で混ぜるかによって無限の組み合わせが楽しめるのも、ブレンドの面白いところです。
アレンジコーヒーで楽しむ(カフェオレなど)
ブラックで飲むのが難しい場合は、ミルクや砂糖を加えるアレンジコーヒーで楽しむのがおすすめです。特にカフェオレやカフェラテにすると、ミルクの脂肪分が酸味を優しく包み込み、非常にまろやかな味わいになります。モカマタリの持つフルーティーな風味は、ミルクとの相性も意外と良く、普段とは一味違った、香り高いカフェオレを楽しむことができます。 また、チョコレートシロップを加えて「カフェモカ」にするのも良いでしょう。 モカの語源という説もあるチョコレートとの組み合わせは、お互いの風味を高め合います。
コーヒーゼリーやスイーツに活用する
飲むのが苦手なら、いっそのことスイーツ作りに活用してしまうのも一つの手です。濃いめに抽出したモカマタリを使ってコーヒーゼリーを作れば、独特の酸味が爽やかなアクセントとなり、大人向けのデザートに仕上がります。 砂糖や生クリームをたっぷりかければ、酸味はほとんど気にならなくなるでしょう。また、ティラミスやパウンドケーキ、クッキーなどの焼き菓子に生地の風味付けとして加えるのもおすすめです。 モカマタリの華やかな香りが、お菓子全体を上品でリッチな味わいにしてくれます。加熱することで酸味も和らぐため、美味しく消費することができます。
まとめ:モカマタリがまずいと感じたら試したいこと
この記事では、「モカマタリ まずい」というキーワードを軸に、そのように感じられる理由から、本来の魅力、そして美味しく楽しむための方法までを詳しく解説してきました。
モカマタリがまずいと感じられる主な原因は、その特徴的な「強い酸味」が好みに合わないこと、そして流通の過程で「品質の低い豆」を選んでしまった可能性、さらには「焙煎度合い」や「淹れ方」が適切でなかったことなどが挙げられます。
しかし、これらの点は、モカマタリの本当の姿を知ることで解消できる誤解でもあります。本来のモカマタリは、「ワインにも似た芳醇な香り」と「フルーティーな甘み」、そして「上質な酸味」が織りなす、非常に気品あふれるコーヒーです。
もし、モカマタリを「まずい」と感じてしまった、あるいはこれから挑戦するのが不安だという方は、以下の点を試してみてください。
・まずは酸味とコクのバランスが良い「中煎り」から試してみる
・お湯の温度を90℃前後に設定し、丁寧にハンドドリップで淹れてみる
・酸味が苦手なら、ミルクと合わせたり、水出しコーヒーにしてみる
・他の豆とブレンドして、自分好みの味に調整する
これらのポイントを押さえることで、モカマタリが持つ「まずい」というイメージは、「美味しい」という感動に変わるはずです。ぜひ、恐れずに「コーヒーの貴婦人」の奥深い世界を体験してみてください。
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